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来客

庭に山茶花の咲き乱れる冬。
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周囲が深と静まり返る夜になると
静かだった風が、これ見よがしに音を立て騒ぎ始める。
枯葉にざわつく風の音、
ひゅるひゅると宙を舞う風。
雨戸を叩く激しい音、
木製建具の隙間から入り込んで来るすきま風。
聞きながらゆっくりと目を瞑ると
小さな家の中は「魔王」の住む広い闇の世界へと変貌する。

そんな冷たい魔王の住む季節、
夏を旨とした風の通りのよいこの家に
先週初めから一人のお客人が、住み始めた。


どんな宿かと訪ねて来た日は、まだほんの秋口で
夏の名残のキツイ日差しが、深い庇に遮られ、涼しい風が吹いていた。
よりによってこの寒い冬に・・
とは思うものの、仕事は季節を選ばない。

出稼ぎ仕事の木賃宿。


***
昨夜、陣中見舞いと称し、間貸しして初めて竈の家を訪ねた。
どう?と訊ねたときには、「メチャクチャ寒いよ!!」と嘆いていた。
それでも幾分かは慣れたのであろうか?
かりそめとは思われぬ荷物の山に私の方が驚いた。
なぜか礼服までもが長押にかかっている。

もう一人、臨時の客人とともに日付が変わるまで話し込んだが
包まれる炬燵と仲間が居れば、機密性のないこの家も快適な空間となれる。

今はお風呂も近くの温泉通い。寝に帰るだけのこの家も
仕事をやり遂げたら二、三日延泊をして
薪でくべた桧風呂にのんびり浸かって過ごしたいと言う。

また一人「竈愛好家」が増えたようだ。


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             (臨時の客人から届いた雑然とした部屋の画像)

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                  (翌朝庭から眺める山茶花)
# by uneme_tayuu | 2006-12-16 18:35 | かまど雑記 | Comments(2)

グレゴール・ザムザ殺害事件

ここ数日の私は大量殺戮鬼と化している。

一時的に症状は治まるのだが、しばらくすると居ても立ってもいられなくなり
庭に出てあるものを探し回る。
そして殺戮。
次々と殺戮。

***
仏教徒である私にとって
「すべての人間ばかりか動物はもちろん
植物をも含むすべての生きとし生けるものを殺してはならない」
という仏教の十戒の中でも第一に挙げられている「不殺生戒」道徳に反することは
かなりの苦痛を伴うものである。
勿論、人は生き物を全く殺さずに生きて行くことはできないが、
無益な殺生は慎むべきであるというのが釈迦の教え。
それなのに夢遊病者のようにふらふらとあるものを捜し求めては手を汚す私。
ザムザ惨殺が無用の殺生かどうか・・否と断定することは私にはできない。
だから、
その罪の意識が夜あらわになる。

庭木に付着し、葉を食い散らすザムザの大群を見つけた瞬間
トングで摘まれ庭石の上で惨殺された死骸の数々
黄色い汁を流すもの、緑の汁を流すもの
からだをくねらせながら苦しむもの
半分つぶされながらも逃げ惑うもの
昼間目にした光景が布団の中でフラッシュバックになって蘇る。
そして
この毛虫たちは、グレゴール・ザムザと同じように
元は人間だったかも知れないという妄想。

***
だいたい、なぜこんなことをしているかというと、
今年はこの時期になっても庭屋さんが入らないからだ。
去年ちょっとした諍いがあったからだろうか?
時期が来れば連絡せずともやってきていたはずが、今年は一向に現われない。
庭屋さんが来て薬剤散布することも、私が手を下すのも、同じといえば同じなのだが
やはり心的外傷の大きさが違う。

それなのに、時間がたつとまた庭に出て、鷹の目のようにするどい目線で
狙った獲物を一網打尽にする私。
仏の顔の私は、そのとき一体どんな表情をしているのだろうか。

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                   (殺された小ザムザの死骸)



今年はウチだけでなく、あちこちで毛虫が異常発生しているのだと聞きます。
皆さんのお家の庭は大丈夫でしょうか?
# by uneme_tayuu | 2006-10-07 10:42 | | Comments(6)

再会

頼まれごとがあって取引先の会社に出向いたときのこと。
「あいにくと○○は外出中(不在)です。」受付で応対に出てくれた男性がそう言った。
あら残念!でもまぁこの人に伝言お願いしておけばいいや。
初めての顔だけど新しい監督さんかな?
そう思いながら彼にひと通りの説明をして、お礼を言って帰ろうとしたそのときだ。
その男性が思いがけないことを切り出した。

「あの~、僕のことわかります?」

?????知り合いだったっけ?
驚いてその顔を見詰めてみたが、誰かなんてすぐには分からなかった。
からだ全体も眺めてみた。上背もあり、なかなかがっしりした体格だ。顎鬚を生やしてはいるが強面ではなく、瞳の奥が涼しげである。
何処で会っただろう?私の知り合いにはいないと思うけど・・・。

「ごめんなさい!どこかでお会いしていましたか?」

そう答えた私に、男性は、わずかに微笑んだような気がする。
「あっ、じゃあ僕の名詞持ってきますね!」
踵を返して、一旦奥の事務所に引っ込んだ。
しばらくして戻ってきた彼が差し出した名刺をみたときの、私の驚きといったらなかったと思う。今思い出しても噴出しそうになるくらい。

“え、え、え、え、えっ!?ケンヤぁぁぁ!?”

でも確かにそうだ。
そうなのだ。
「えっ、でも、あの!料理の道に進んだって聞いていたけど・・・?」
「そうなんです。だけどいまは辞めて、ここでお世話になっているんです。」
シェフから現場監督??
そんなことがあるなんて!!
あまりの驚きに、次に何を聞けばよいのか分からなくなって
「すっかりたくましくなって~!全然わからんかったわ。」
そんなありきたりの言い訳を二度も言ってしまったりした。
「だって僕もう三十ン歳ですよ。すっかりオジサンですよ~。」

“あんたがオジサンなら私はどうなるのよ!”


「お姉さんの名刺が置いてあったんです。」

「最初は、お姉さんとおんなじ名前やと思ったんやけど、お姉さんやということが分かって、まだ会っていないんやけどなって家でも話してたんです。」
「お姉さんて・・・」
「僕の家ではお姉さんはずーーっとお姉さんなんです。」
嬉しいと言えば嬉しいのだが、なんだか複雑。

それにしても・・・何度かお邪魔していた会社だったが全く知らなかった。
だけどケンヤは知っていたのだ。
いずれ私に出遭うと思っていたのだろうか。
でも彼にしたって、それがその日そのときだとは思いもしなっただろう。
私が扉を開けたとき、あれこれと商品説明をしているとき、私が考え込んでいるとき、どんな想いで見ていたのだろう?
走馬灯のように想い出が蘇ってきた。

***
まだ中学生だったケンヤの家庭教師。それが私とケンヤとの関係だった。
二年程は通っただろうか?勉強を教えるというよりは、いつもただ喋っていただけのように思う。学校の話、食べ物の話、漫画の話、内容はもうほとんど忘れてしまったが、お喋りなケンヤの聞き役、それが仕事。友達か仲のよい姉弟のような関係だった。
あっ、お姉さんか。
そうだ、家庭教師なのに先生とは終ぞ言われなかったぞ!(爆)
でも三年は、自分の卒論と重なったことと、頑張ればできる子なのに頑張らせてあげることができないことに負担を感じ、少し離れてしまった。
そんなすまない思いもあってずっと気にかかっていたのだけれど
まさか、こんな形で再会しようとは!

料理の道に進んだと聞いたときは、なるほどと思った。
とにかくその頃から味にうるさかった。
どこそこのお店がうまいだのまずいだのよく知っていたし、おやつに母親が出してくれるケーキの味にもうるさかった。
どこで働いているのか知る機会を得たら、行って驚かせてやろうと思っていた頃もあったのに、二十数年の歳月を経たのちに、逆に自分が驚かされることになろうとは!
全くもって人生は分からない。

***
差し出された名刺を挟んで、カウンター越しの会話はその後もしばらく続いていた。
でも後になって思い返してみると、肝心なことは何も聞かなかった、そんな気がするのだ。
長い長い年月の隔たりがあるのだから、それはそれで仕方のないことなのかもしれないけれど・・。
ただその日嬉しかったのは、引き返す車の中が、ほのぼのとしたやさしさでイッパイに包まれていたことだ。
# by uneme_tayuu | 2006-09-19 12:23 | | Comments(4)

かまど夏季休暇中です!

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竈の家を訪れてくれた人に
書いていただいているかまど帳と色紙

かまど帳は現在2冊目

ちょうちんは私の東京みやげの
「江戸提灯」
とっさに竈の字が思い浮かばず
四苦八苦しましたが・・なんとか・・。

セピア色の写真は「収録記念」

新しい想い出が少しずつ形作られています。
# by uneme_tayuu | 2006-08-15 23:20 | | Comments(2)

外壁 その1

竈の家の外壁は、四方ともにそれぞれ表情が異なる。
一番荒れている西面は写真のような悲惨な状態。
修繕作業の撮影のとき、ジャッキで土台を持ち上げた箇所の
すぐ裏手に当たるのだが
杉皮がめくれて下地の土壁や小舞竹が丸見えだ。
外壁 その1_f0044728_23521960.jpg

ここを見たとき、ふとどこかで見たような・・・・?と思った。

そうだ、そうなのだ。
明治村にある重要文化財「東松家住宅」と似ているのだ。

片や当時でも珍しい三階建て商家の木造住宅と、片やツシ二階の農家の住宅。
似ていると言うにはちょっとおこがましいが、
外壁に杉皮が使われているところは同じ。

外壁 その1_f0044728_23523384.jpg


実は、数年前明治村で東松家を見たとき
ムム、どこかで見たことがあるような・・・?と思ったのだった。
そのときは、まさか自分が過去に生活したことのある家の外壁とは
思いもつかなかったが、
そのときの体験は既視感ではなく、まさしく実体験だったということだね。

東松家の方は、建築当初から裕福な商家の住まいとして建てられ、三階建てながら
侘び寂びも感じられる繊細な造り。
移築時には修繕も施されているので見た目にもすっきりと美しい。
竈の家はといえば、当時よくある普通の民家。
家の裏側に当たるので、恐らく修繕など一度もされていないだろう?
建築当初から、さすが材木屋とでもいうのか、
杉皮の押さえに丸太の木皮を利用したりと上手に工夫してはいるが
侘び寂びというにはほど遠い。


今では建築基準法、消防法の規制が絡み、こんな外壁は使えないだろう。
できることならここも美しく直してみたいものだ。
# by uneme_tayuu | 2006-08-05 23:58 | 竈の家紹介 | Comments(2)